【就業規則】10人未満は必要?10人以上との違い、テンプレートも解説

この記事の執筆者

古賀 泰成(こが たいせい)
こが社労士パートナーズ
代表社会保険労務士

法政大学 経営学部卒業。
自動車メーカーにて海外拠点での営業・物流管理に7年従事。
その間に社労士資格を取得し、父の社労士事務所に勤めた後に開業。
労務×採用で、小規模事業~中小企業まで支援実績あり。

目次

就業規則とは?

就業規則は、会社の最重要フレームワーク

就業規則は、会社と従業員の間で守るべきルールを明文化した文書です。これには、労働時間や給与、休暇、懲戒処分など、企業が従業員に対して守るべき事項が詳細に記載されています。言わば、企業内のルールブックのようなものです。

例えば、サッカーをイメージしてみてください。
チームが一丸となって試合に勝つためには、以下の2つが必要です。

チームメンバーが知っておくべきこと
①サッカー自体のルール 
②チームの方針・戦術

同様に、会社が目指す方向に進むためには、就業規則と言う全員が理解し、従うべきルールが必要です。

従業員が知っておくべきこと
働くこと自体のルール(=労働法
会社の方針・戦術(=ビジョンと社内制度

就業規則があることで、チームに規律を生むことができ、個人プレー主体でなく、チームとして型取ることができます。それはもちろん、監督(経営者)による、チームへの周知があってこそです。

しかし、「10人未満の小規模な会社には、そもそも就業規則が必要なのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
この疑問を解消するために、次のセクションで『10人未満の会社』と『10人以上の会社』での就業規則の違いについて詳しく説明します。

『10人以上』と『10人未満』の違い

法的な違い

労働基準法によって、常時10人以上の労働者を使用する企業は、就業規則の作成が法的に義務付けられています。
この場合、作成した就業規則は所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
*ちなみに、労働者の人数には正社員だけでなく、アルバイトやパートタイムも含まれるため、注意が必要です。

参考:人数の数え方は、以下に詳しくまとめました。
【就業規則】常時10人以上とは?届出義務が発生するケースと注意点まとめ

一方で、10人未満の会社には就業規則の作成義務がありません。
このため、これらの会社には就業規則が存在しない場合もあります。しかし、法的義務がないからといって、全く必要ないわけではありません。後ほど、その理由を掘り下げていきます(先に知りたい方はここをクリック

実務的な違い

10人以上の企業では、部署や職務が増えてくるため、就業規則に複雑で詳細な規定が必要になることが多いです。
特に、以下のような内容が詳細に記載されることが一般的です。

  • 役職や職階に応じた給与体系: 各役職ごとに給与が設定され、賃金テーブルや昇格の基準が明確に定められます。
  • 人事評価制度: 従業員のパフォーマンスに基づいて、昇進や賞与の判断のための評価制度が定められます。
  • 福利厚生制度: 会社規模が大きくなると、福利厚生が増える傾向にあります。例えば、『特別休暇制度』や『退職金制度』、『各種手当(住宅手当や通勤手当など)』の詳細が記載されます。

一方で、10人未満の小規模企業では、こうした詳細な規定が必要ない場合が多いです。
例えば、従業員全員が同じ職場で一緒に働いている場合、役職が多くなかったり、非常にシンプルな形でしか存在しないことが多いです。また、職場全体のコミュニケーションが密であるため、複雑な人事評価制度や厳密な福利厚生制度がなくても、柔軟に運用できることが多いです。

具体的に、10人未満の企業で必要となる就業規則の内容は次の通りです。
特に1や2は、労働基準法で「必ず規定するべき事項(絶対的必要記載事項)』があるため、要チェックです。

  1. 基本的な労働条件: 労働時間や休憩時間、休日などの基本的な労働条件を明記します。
  2. 給与支払方法: 給与の支払い方法や支払日を明確にし、従業員の安心感を高めます。
  3. 職場内ルール: 小規模な職場では、従業員同士の関係性がより重要になるため、職場内の基本的なマナーやルールを定めることが効果的です。

「10人以上の会社」と同じような就業規則は必要?

では、10人未満の会社が、10人以上の会社と同じような就業規則を持つべきなのでしょうか?
答えは、「必ずしもそうではない」です。

理由の一つに、無駄に複雑な規定を設けると、かえって運営が難しくなることが挙げられます。
例えば、小規模企業では役職が少なく、昇進の機会も限られているため、詳細な昇進制度を設けても意味が薄れることがあります。また、福利厚生についても、過度に手厚い制度を設けると、コストが増大し、かえって経営を圧迫する可能性があります。

そのため、10人未満の企業では、必要最低限の内容に絞り、シンプルかつ柔軟な就業規則を作成することが重要です。

こが社労士パートナーズ代表 古賀

たまにあるのが「運用工数を試算せずに規則を作ってしまう」ことです。金額計算や勤務管理、評価制度など、後々自分を苦しめてしまわないよう気を付けましょう。

10人未満の会社で就業規則を作ることのメリット・デメリット

メリット

上記で、10人以上と同じ就業規則は、10人未満の会社には適さないと説明しました。
しかし、就業規則を作らないことが最適だとは限りません。
10人未満の会社でも、就業規則を整備することで得られるメリットは多岐にわたります。

  • トラブルを未然に防ぐ

    例えば、懲戒処分の基準や欠勤時の給与控除のルールが明確でないと、トラブルに繋がります。
    就業規則にこれらを明記しておくことで、従業員の間で共通の理解が得られ、トラブルを未然に防ぐことができます。
  • 従業員の摩擦を減らす

    きちんと就業規則が周知されている場合ですが、従業員間での意識や規律の差を埋めることができます。特に、新しい従業員が入社した際、就業規則を通じて企業のルールや文化を伝えることができます。これにより、従業員同士の摩擦を減らすことができます。
  • 助成金申請ができるようになる

    助成金を申請する際、就業規則の提出が条件となる助成金があります。

デメリット

一方で、就業規則を作成することにはデメリットも存在します。その一つが、作成コストと運用の負担です。

10人未満の会社では、就業規則の作成や定期的な見直しに時間やリソースを割くことが難しい場合があります。
また、法的に義務付けられていないにもかかわらず、複雑な規定を作成すると、逆に社内の柔軟性を損なう可能性があります。さらに、作成した就業規則が変更される場合、不利益変更に対する手続きが複雑であるため、再度大きな手間がかかることがあります。

しかし、これらのデメリットは専門家に相談することで最小限に抑えることができます。例えば、社労士に就業規則の作成を依頼すれば、法律に準拠しながらも、企業の実情に即した規定を作成することが可能です。これにより、就業規則を作成することで得られるメリットを享受しつつ、デメリットを軽減できます。

こが社労士パートナーズ代表 古賀

こが社労士パートナーズでは、10人未満の会社向けのサービスもございます。通常の作成費用と比べ、安価ながら、サービス品質は落とさず、丁寧に対応させて頂きます。お問い合わせは無料なので、お気軽にお問い合わせください。

無料テンプレートでおすすめは?使う場合の注意点は?

無料テンプレート紹介

ここでは、いくつかの代表的な無料テンプレートを紹介します。

厚生労働省の就業規則モデル

厚生労働省が提供するモデルは、法的に必要な事項が網羅されております。
しかし、法律の以上の規定が記載されており、会社側に負担が掛かる内容が含まれます。

社労士事務所の就業規則モデル

社労士事務所によっては、自社ウェブサイトで無料の就業規則モデルを提供しています。ただし、最新の法律に適用していない場合があるので、ご注意ください。

クラウドサービスの就業規則モデル

クラウドサービスを利用した就業規則のテンプレートもございます。
提供元のサポート体制や法改正対応がしいかりしているかを確認することが重要です。

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無料テンプレートを使用する際の注意点

  • 業界や自社の事情に噛み合わないことがある

    無料テンプレートは、あくまで汎用的な内容となっているため、自社の業界特有の事情や独自の運用方法には必ずしも対応できません。このため、使用する際には自社の実情に合った修正を加えることが重要です。特に、労働条件や福利厚生に関する内容は、企業ごとに大きく異なる場合があるため、慎重な見直しが求められます。
  • テンプレートが10人以上向けのことがある

    無料テンプレートは10人以上の企業を前提に作られていることが多いです。
    このため、10人未満の企業がそのまま利用すると、余計な規定が含まれてしまうことがあります。
    例えば、複雑な評価制度や詳細な役職手当の規定など、実際の運用に適さない部分は削除または簡略化する必要があります。
  • 一度作成すると、不利益変更の場合は変更のハードルが高い

    就業規則を一度作成すると、その後の変更は簡単には行えません。不利益変更の場合、従業員の同意が必要になるなど、手続きが複雑です。このため、初めて作成する際には、テンプレートに頼るのではなく、専門家と相談してしっかりとした内容を作成することが重要です。
  • 規定の意味が分からず、運用が始まる

    就業規則は、規定の背景を知ったうえで、運用するのが重要です。なぜなら就業規則は、会社側で一方的に解釈できるわけではなく、客観的で合理的に解釈されるためです。会社が「こういう意味だ」と言っても、それは従業員や裁判官からすると、違う解釈として捉えられるかもしれません。
    そうならないよう、事前に、誰がどう見ても同じ解釈にする必要があり、それには過去の裁判例や、運用の知識が必要になってきます。

参考:厚生労働省のテンプレート(モデル就業規則)については、以下をご参考ください。
【就業規則】厚生労働省テンプレートを解説。中小企業が注意すべきポイント11選。

こが社労士パートナーズ代表 古賀

特に4つ目の「規定の解釈」ですが、よくあるのは、トラブルになってから初めて解釈の違いを知ることです。就業規則に限らず、どんな人であっても、自分の立場や経験に基づいて解釈してしまいまいがちですよね。

それでもやっぱりテンプレートを活用したい!

それでもやっぱりテンプレートを活用したい!という場合には、最低限の内容をテンプレートでカバーし、不安な部分だけを専門家に相談する方法もあります。

一部の社労士は、就業規則を一部だけ修正したり、作成するサービスを提供しています。

例えば、賃金規定や休職規定など、企業運営に大きな影響を与える部分については、社労士に相談してしっかりとした内容を整備することも良いでしょう。これにより、全体のコストを抑えつつも、企業にとって重要なポイントを確実にカバーすることが可能です。

こが社労士パートナーズ代表 古賀

こが社労士パートナーズでも、一部の規則のみの作成、修正を行っています。安価ながら、サービス品質は落とさず、丁寧に対応させて頂きます。お問い合わせは無料なので、お気軽にお問い合わせください。

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事業拡大が見込める会社はどうなのか?

ここまでで、10人未満の企業に適した就業規則の作成について説明しましたが、事業拡大を見込んでいる場合はどうでしょうか?近い将来に従業員が10人以上になる予定がある場合には、その状況を見越して、あらかじめ10人以上の企業向けの就業規則を作成することも選択肢の一つです。

例えば、新たな事業展開や市場拡大を計画している場合、急速に従業員が増加する可能性があります。その際、あらかじめ10人以上の就業規則を整備しておけば、急な労務管理の混乱を避けることができます。

まとめ

10人未満の会社でも、就業規則を作成することには大きな意味があります。トラブルを未然に防ぎ、社内の秩序を維持するためにも、就業規則の整備は有効です。また、助成金申請や特定の社内制度の導入を予定している場合には、就業規則が不可欠です。

しかし、無料テンプレートをそのまま使用することにはリスクも伴います。自社のニーズに合った内容を作成するためにも、専門家と相談することが重要です。

こが社労士パートナーズでは、以下のサービスを提供しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • 10人未満向け就業規則作成

    まずは、ご相談者様(パートナー)の将来のビジョンと会社の理想像をお伺いします。
    それをもって、適切な規則を作成します。
  • 一部規約のみの作成・修正サービス

    アルバイト規定や休職規定など、必要な部分だけを割引価格で作成します。
    また「最近施行されたあの法律を取り入れたい」なども、柔軟に対応いたします。
  • ルールブックの作成

    「せっかく作成したのに、従業員が理解してくれてるのか不安…」といった悩みも聞きます。
    単に就業規則を周知しても伝わらない可能性があります。思いを込めてしっかり伝えるならば、別途ルールブックを配布するのも手です。
    従業員が理解しやすいビジュアルで分かりやすいルールブックを作成します。
こが社労士パートナーズ代表 古賀

就業規則は「あなたの会社として、組織を型取るフレームワーク」です。
ここまでいろいろと書きましたが、あなたの会社をどう形作りたいか、ビジョンを想像しながらワクワクして作るのがいいでしょう。
どんな形であれ、従業員に思いが届くような良い就業規則ができるといいですね!

この記事の執筆者

古賀 泰成(こが たいせい)
こが社労士パートナーズ
代表社会保険労務士

法政大学 経営学部卒業。
自動車メーカーにて海外拠点での営業・物流管理に7年従事。
その間に社労士資格を取得し、父の社労士事務所に勤めた後に開業。
労務×採用で、小規模事業~中小企業まで支援実績あり。

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