【就業規則】常時10人以上とは?届出義務が発生するケースと注意点まとめ

「従業員が増えてきたけれど、何から手をつければ良いのか分からない」とお悩みではありませんか?
特に、従業員が10人に近づいてきた会社は、就業規則の作成や届出の義務について、戸惑っている方も多いでしょう。
本記事では、届出義務が発生するケースや注意点について、経営者が知るべきポイントを分かりやすく解説します。

こが社労士パートナーズでは、就業規則の作成について、さまざまなメニューを揃えています。
無料相談もございますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

古賀 泰成(こが たいせい)
こが社労士パートナーズ 代表


法政大学経営学部卒業。自動車メーカーにて10年近く勤務した後、社労士試験合格。
社労士事務所勤務後、こが社労士パートナーズを設立。
オンラインを活用しながら、クイックレスポンスかつ丁寧な対応を心がける。
組織作りに強く、また採用やITを駆使して、小規模事業~中小企業まで実績あり。
「就業規則を組織作りのきっかけとしたい」と考え、情報発信と顧客提案を大事にする。

目次

常時10人以上で届出義務が発生

届出義務とは何か

まず、就業規則とは、企業内での労働条件や就業ルールを明文化したものです。労働者が安心して働ける環境を整えるため、また、労働トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則の整備は欠かせません。

そして、従業員が「常時10人以上」いる事業所では、就業規則を作成し、届け出る義務があります(「就業規則の届出義務」)。これは労働基準法で定められています。

届出先は、管轄の労働基準監督署です。必須項目を記載した上で、決められた手順に従って、届出します。
詳細は別記事で解説しますが、大事なのは、きちんとした手順を踏むことです。

こが社労士パートナーズ代表 古賀

就業規則は古くからあり、昭和22年(1947年)に労働基準法の中で登場しました。実はそこから今まで、法律自体の規定はあまり変わっておりません。

届け出なかった場合の罰則は?

届出義務を怠った場合、会社には法的なリスクが発生します。

具体的には、労働基準法に違反することとなり、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
この罰金は、単なる金銭的なペナルティにとどまらず、会社の信用にも大きな影響を与えます。特に中小企業にとっては、このようなトラブルを避けるために、法的な義務を確実に履行することが重要です。

またよくあるのは、労働基準監督署からの監査の際に、就業規則を作成していないケースです。
作成していないと、監査時に指導を受けることになります。そうなると、時間やコストの面で大きな負担となるだけでなく、従業員との信頼関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。就業規則の届出を怠ることで、会社の評判や業績に悪影響が及ぶリスクを考慮すると、届出義務をしっかりと果たすことが重要であることが分かります。

常時10人以上とは?カウントの仕方

常時10人以上」の意味

「常時10人以上」とは、簡単に言えば、事業所において日常的に10人以上の労働者が所属している状態を指します。

ここで注目すべきは、「常時」という言葉です。この「常時」とは、単に一時的な増減を無視して、全体として見た場合に、労働者数が10人以上であることを意味します。
例えば、一時的に繁忙期は10人以上であったとしても、年間を通して10人未満の月が大半の場合は、「常時10人以上」には当てはまりません。

しかし、それが長期間続くと「常時」とみなされる可能性がありますので注意が必要です。
一時的な増減であれば、必ずしも届出義務が発生しない場合もありますが、判断に迷う場合は専門家に相談するのをおススメします。

カウントは会社単位ではなく、事業所単位

「常時10人以上」の基準を考える際、もう一つ重要なポイントがあります。それは、事業所単位でカウントする、ということです。これは、例えば複数の営業所や店舗を持っている会社の場合、それぞれの事業所で従業員の人数をカウントするという意味です。

例えば、A支店で7人、B支店で5人の従業員がいる場合、それぞれの支店では「常時10人以上」に達していないため、就業規則の届出義務は発生しません。

また、従業員によっては、複数の店舗を掛け持ちする方もいるでしょう。そういった方は、両方の店舗に含めてカウントしますしょう。例えば、A店とB店の掛け持ちの場合、A店でプラス1名、B店でプラス1名とします。

アルバイトやパートもカウント対象

また、正社員だけでなく、アルバイトやパートタイム労働者もカウントの対象になります。この点は、特に中小企業の経営者にとって、見落としがちなポイントかもしれません。

例えば正社員が6人、パートタイム労働者が4人いる場合、全体で10人の労働者がいることになり、「常時10人以上」の基準を満たすことになります。この場合、就業規則の届出義務が発生します。

派遣社員は、派遣先ではカウント対象外

一方で、派遣社員については、派遣先の事業所ではカウントしません。

派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んでいるため、派遣会社の所属となります。
よって、派遣先で業務をしていたとしても、そこではカウント対象外となります。

したがって、たとえ事業所に派遣社員が複数いたとしても、正社員やパート、アルバイトの人数が10人未満であれば、就業規則の届出義務は発生しません。

休職中の従業員はカウント対象

また、実際に勤務していない従業員にも注意です。

常時10人以上「出勤」ではなく、「所属」ですので、出勤していなくても、所属している従業員はカウント対象になります。
例えば、シフトにほとんど入らなかったり、休職している従業員はカウント対象です。

自分はカウント対象外、役員は労働基準法に照らして

経営者自身は、カウント対象外となります。

身内の従業員や、役員については、労働基準法が適用されるかされないか、で判断します。
適用されない場合は、労働者ではないのでカウントしません。

一方で、実態が労働者のような働き方をしていたり、経営における権限や責任がない場合は、労働者とみなされます。判断にあたっては、役職や肩書ではなく、実態が大事であることに注意しましょう。

10人未満の時点で、準備をするのもおススメ

作成は余裕をもって10人未満の内に

以上、就業規則の届出義務と人数について解説しました。法律上の義務は「常時10人以上」で発生しますが、10人に達してから慌てて作成するのではなく、できるだけ余裕を持って、10人未満のうちに準備を始めることをお勧めします。

その理由は以下の3点です。

  • 漏れやミスが減る

    就業規則は、不利益変更(作成後、従業員の不利になるように変更すること)は、個別の説明や合意形成が必要で、ハードルが高いです。よって、最初に慌てて作った規定のせいで、会社の利益を圧迫したり、余計な工数が掛かり続ける可能性があります。それらを防ぐため、慌てて作成するのは避けましょう。
  • 少しずつ制度を拡充していける

    10人未満の段階であれば、まだ変化が少なく、会社の運営も比較的シンプルです。
    このタイミングで就業規則を作成しておくと、制度を少しずつ拡充していけますし、成長に伴い緩やかに制度を運用していけます。
  • 助成金申請ができるようになる

    就業規則は、助成金申請時にも必要になってきます。中小企業でも申請できる助成金は多くありますが、会社の制度に関わるものには、要件として、就業規則(もしくはそれに準ずるもの)を提出しなければいけません。

就業規則は会社を助けてくれるツールでもある

「就業規則」と聞くと、難しくて面倒なものと感じる方もいるかもしれませんが、実際には会社を守り、労働環境を整えるための重要なツールです。

たとえば、労働時間や給与の取り決めが明確になっていれば、社員とのトラブルを未然に防ぐことができます。

また、以下の様に就業規則がないと実施できない制度もあります。これらは就業規則がないと無効と判断されます。
・1ヵ月単位の変形労働 ・変形休日制 ・フレックスタイム ・振替休日 ・配置転換 ・懲戒 ・休職

大事なのは、足を引っ張る就業規則ではなく、会社の資産となるような就業規則を作ることです。

就業規則の作成について、お気軽にご相談ください

もし、就業規則の作成や届出に関して不安や疑問がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。

こが社労士パートナーズでは、10人未満~中小企業まで、会社に合ったメニューを揃えております。
・一部規定のみの作成 ・簡易版の作成 ・10人未満向け規定の作成・従業員向けルールブックの作成
丁寧にその会社のビジョンや事情をお伺いします。作成中は気軽に何度でもやり取りが可能です。

就業規則の整備に不安がある方や、どこから手を付ければよいか分からない方も、安心してご連絡ください。

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